ドミニク・キーティングが『バナー』社のゲイル・ワイナンドの執務室にやって来た。
ワイナンドは立ち上がり、執務室の真ん中あたりまで歩み出て、ドミニクを迎える。
「はじめまして、キーティングさん」
「はじめまして、ワイナンドさん」
彼は、ドミニクに椅子を持ってきて勧めた。彼女がそこに腰を下ろしたとき、彼は自分の机の椅子にもどらずに、そのまま立って、ドミニクの姿を吟味した。いかにも女に関しては専門家という目である。しかも、賞賛の目である。
ワイナンドのふるまいは、自明の必然性というものを示唆していた。あたかも、自分がこうしてドミニクの姿をしげしげと賞味する理由はドミニクにもわかっていることであるかのように。こうした自分の行動に不適切な点などいっさいありえないかのように。ワイナンドは言う。
「あなたは、あなた自身の様式化されたヴァージョンを、もっと様式化したヴァージョンですな。一般的な法則としては、芸術作品のモデルを実際に目にすると、人間というのは無神論者になりがちです。しかし、今回のケースでは、彫刻家と神との間は非常に接近していますね」
「何の彫刻家でしょうか?」
「あなたの彫像を作った彫刻家ですよ」
あの彫像の制作に関しては何らかの特別な事情があるらしいとワイナンドは察知していた。その瞬間のドミニクを見て、ワイナンドは自分の勘の正しさを確信した。自制的で端正で何事にも無関心そうに見えるドミニクの顔に、一瞬ではあるが緊張が浮かんだから。
「ワイナンドさん、どこで、いつ、あなたはあの彫像をご覧になったのでしょうか?」
「私の美術品のギャラリーにあります。今朝も見てきたところです」
「どこで入手なさったのでしょうか?」
不思議そうな顔をするのは、今度はワイナンドの方だった。
「あなたは、そのことをご存知なかったのですか?」
「存じませんでした」
「あなたのお友だちのエルスワース・トゥーイーが私に、あの彫像を寄こしたのですよ。贈り物としてね」
「私が、あなたにお会いできるように取り計らってくださるために、でしょうか?あの方は、彫像のことは私には全くおっしゃいませんでした」
「キーティングさん、私があなたの彫像を所有していることは、あなたの好むところではないのではありませんか?」
「いいえ、特にそうというわけでは」
「私は、てっきりあなたが喜んでくださるものと期待しておりましたよ」
「私は、喜んではおりません」
ワイナンドは机の端に腰を下ろす。この状況にはそぐわない気楽な態度である。両脚を前に伸ばして、足首を交差させている。彼は質問する。
「あなたは、あの彫像の行方(ゆくえ)がわからなくて、なんとか探し出そうといろいろ試みてこられたのではないでしょうか?」
「2年もの間ずっと捜してまいりました」
「これで、もうあなたの手には入りませんよ」
ワイナンドはドミニクをじっと見つめながら言う。さらにこう言う。
「そのかわり、あなたのご主人がストーンリッジ開発の仕事を手に入れるかもしれません」
「私の気持ちが変わりました。トゥーイーがあなたにあの彫像を贈って、ありがたいと思います」
ワイナンドはドミニクの心の中が読めたと思った。彼女の考えがあからさまであると考え、勝利の苦い小さな疼(うず)きを感じた。さらに幻滅の苦い小さな疼きも。やはり、この女もこの程度の人間か・・・
さらに彼はドミニクに質問する。
「あの彫像が私に贈られたことが、この面談を可能にしたからですか?」
「いいえ。トゥーイーにはあの像を絶対に持っていてもらいたくはありませんので。あの彫像を所有してもらいたいと私が望む人がいるとしたら、あなたは最後から二番目の方です。トゥーイーが最後です。ワイナンドさんに持っていてくださるほうがましです」
ワイナンドは、さきほどまで持っていた勝利感を失くした。これは、ストーンリッジ開発がめあての女が言ったり、考えたりすることではなかった。彼はさらに質問する。
「トゥーイーがあの彫像を所有していたことを、あなたはご存知なかったのですね」
「存じませんでした」
「我々は、どうやら我々の共通の友人、エルスワース・トゥーイー氏に対処するのに一致協力すべきですよ。私は、彼の行うチェスの駒でいたくはありません。私が推察するところによれば、あなたもそれは好まないし、そうされるのに甘んじるはずがありません。トゥーイー氏が口に出さないように選択したことは、あまりに沢山あります。たとえば、あの像を作った彫刻家の名前ですが」
「彼は彫刻家の名前をあなたに言わなかったのですか?」
「言いませんでした」
「スティーヴン・マロリーです」
「マロリー?・・・まさか、あの彼を射殺しようとした・・・」
ここまで言って、ワイナンドは大笑いする。
「ワイナンドさん、どうかなさいましたか?」
「トゥーイーは、彫刻家の名前を思い出せないと私に言ったのですよ。自分を襲撃して逮捕された男の名前を思い出せないと」
「トゥーイーさんに、まだ驚かされていらっしゃるのですか、あなたは?」
「彼には、つい最近も驚かされたばかりです。彼ほどの見え透いた図々しさには、ある特別な類の巧妙さというか狡猾さがありますな。実に難しい種類の狡猾さが。私は、あの男の手練手管というか権謀術数というものの下らなさについては、ほとんど感心しています」
「私は、あなたのご趣味には同意しかねます」
「どんな分野でもそうでしょうか?彫刻では趣味が同じでしたね。もしくは建築ではどうでしょう」
「建築の分野では、趣味が同じか、まだわかりません」
「あなたにとって、建築について話すのは、かなりまずいことではありませんか?」
「多分、まずくはありません」
ワイナンドはドミニクを見つめて、こう言った。
「あなたは、面白い方だ」
「わざと面白くしているわけではありません」
「それが、あなたの3番目の間違いですよ」
「3番目?」
「最初の間違いが、トゥーイー氏に関することです。こういう状況では、普通ならば、あなたは彼のことを私に誉めるなり何なりすることが期待されているはずです。たとえば、彼の書いたものを引用するとか。建築に関する分野で彼が享受している高い評価をひきあいに出すとか」
「でも、エルスワース・トゥーイーに関することでしたら、あなたはよくご存知のはずです。あなたの前で彼の書いたものを引用するなど、意味がありません」
「残念だなあ。トゥーイーの下らなさをよく知っている私の前で、あなたがトゥーイーを賞賛したら、私はあなたを嘲笑できたのになあ。そうしたかったなあ。しかし、あなたは、全くそんな機会を私に与えるつもりはないようですね」
「そんなことをしたら、あなたをもっ面白がらせてしまいますでしょう?」
「私があなたとこうしていて面白く思うことは想定内でしたか」
「はい」
「あの彫像に関しても想定内でしたか?」
これは、ワイナンドがドミニクに関して発見した唯一の弱点だった。彫像のことに言及したとき、確かにドミニクは動揺を示したのだから。
「いいえ。それは想定外でした」
「教えていただきたい。あの彫像はいつ、誰のために、製作されたのですか?」
「それも、トゥーイーさんがお忘れになったことのようですわね」
「そうらしいですね」
「ストッダード殿堂と一般に呼ばれる建造物に関するスキャンダルを覚えていらっしゃいますか?二年前のことです。当時、あなたはニューヨークにはいらっしゃいませんでしたが」
「ストッダード殿堂・・・私が二年前にこの街にいなかったことを、なぜあなたはご存知なのかな?・・・待てよ、ストッダード殿堂。思い出した。神を冒涜する教会とか、神聖を汚す建物とか・・・宗教界の人間たちがそれで大騒ぎをしたとか・・・」
「そうです」
「確か、そこには・・・その殿堂には全裸の女の彫像が関係していた・・・」
「そうです」
「そうでしたか・・・」
ワイナンドは少しの間、何も言わない。それから、声をかすらせながら、彼は言う。ドミニクには推測しようもない対象に向けて、何かの怒りをぶつけているかのように言う。
「あの時、私はバリ島あたりを航海していました。ニューヨーク中の人間が、私が見る前に、あの像を目にしていたとはなあ。悔しいなあ。私はヨットで航海中は、新聞を読まないことにしています。私がヨットの上にいるときに新聞を送ってくる人間は即座に解雇されるという規則が、我が社にはありましてね」
「ストッダード殿堂の写真は、ご覧になったことがありまして?」
「いや。その建物は、あの彫像にふさわしいものだったのですか?」
「あの彫像は、かろうじてあの建物にふさわしいものでした」
「その建物は壊されたのですね?」
「はい。ワイナンド系列の新聞がキャンペーンを張りました」
ワイナンドは肩をすくめる。
「アルヴァ・スカーレットがその件では大いに楽しんだことを思い出しました。その問題が起きたときに不在だったのは残念でしたな。ところで、どういうわけで、あなたは私がそのとき不在だったことを知っておられるのですか?私が不在だったことが、なぜ、あなたの記憶に残っているのでしょうか?」
「あなたの所で私は職を失くしましたもの、あの件に関することで」
「あなたの職?私の所?」
「私の結婚前の名前は、ドミニク・フランコンです。ご記憶にありませんか?」
仕立てのいい上着の下で、ワイナンドの肩が前方に崩れるような動きをした。それは驚愕(きょうがく)だった。取り返しがつかない、どうしようもないといった驚きだった。ワイナンドはドミニクを凝視する。ただ単純に彼女を見つめる。しばらくしてから、彼は言う。
「まさか、そんな」
ドミニクは、どうでもいいといった無関心な調子で微笑む。それから言う。
「どうも、トゥーイーという人は、私たちにとって、物事をできるだけややこしくしておきたかったようですわね」
「トゥーイーのことなど、どうでもいい。これは、きちんと理解しておかないと。おかしなことだ。あなたが、ドミニク・フランコン?」
「はい」
「このビルで、あなたは何年も働いていらした?」
「6年間」
「なぜ、我々は前に会ったことがなかったのでしょうか?」
「あなたは、社員の誰とでもお会いになるわけではなかったので」
「私が何を言っているのか、あなたにはおわかりになるはずですが?」
「その理由をあなたに申し上げた方がいいのでしょうか?」
「ええ」
「つまり、なぜ私があなたにお会いすることを避けていたかという理由ですね?」
「そうです」
「お会いしたいという気持ちが、私にはありませんでした」
「あなたのような美貌の持ち主が、私の評判を知っていたのならば・・・なぜ、あなたは『バナー』でもっと大きな成功を勝ち得ようとしませんでしたか?」
「私は、『バナー』で出世する気はありませんでしたから」
「なぜ?」
「多分、あなたがヨットの上ではワイナンド系列の新聞をご自分に読むのを禁じたのと同じ理由でしょう」
「なるほど・・・それはもっともな理由ですな」
ワイナンドは静かに言う。それから、彼はもう一度自分の声がさりげなく聞こえるようにして、質問する。
「で、あなたが解雇されたのはなぜですか?わが社の方針に反したことでもしたのでしょうね?」
「あのストッダード殿堂を擁護しようとしました」
「『バナー』に誠意を尽くすよう試みるためには、それ以上できることが見つけられなかったわけですか、あなたは?」
「それを、私はあなたに申し上げるつもりでおりました・・・もし、その機会をあなたが私に与えて下さるのならば。私はこの新聞社で働くのが好きでしたが」
「このビルでそんなことを言ったのは、あなたが、ただひとりですよ」
「ふたりのうちのひとりだと思います」
「誰ですか?もうひとりは?」
「あなた御自身です、ワイナンドさん」
「そう確信をもって言わないで下さい」
ワイナンドは頭を上げながら、ドミニクの目の中にある面白がっているような風情を目にして、こう言った。
「そのような種類のことを言えば、私を罠にかけられると考えて、あなたはそうおっしゃったわけですか?」
「はい。そう考えました」と、ドミニクは落ち着いて答える。
「ドミニク・フランコン・・・」と、彼は繰り返す。ドミニクに向かって言っているわけではない。
「私は、君の書いたものが好きでした。前職にもどしてくれと頼みこむために、あなたがここにいるのならば、よかったのになあ」
「私はストーンリッジ開発の件で、ここに参りました」
「ああ、そうですな、もちろん」
ワイナンドは本題を思い出す。ドミニクがどんな話し合いを選び、ドミニクが嘆願者としてどう行動するかを眺めるのは、さぞ面白かろうと彼は思う。
「さて、その件について、あなたは私に何を言ってもらいたいですかな?」
「あなたが夫に設計料を払ってくださることを私は望んでおります。もちろん、そんなことを、あなたがなさるべき義理も理由もありません。それは、わかっております。交換条件として、私があなたと寝ることに同意でもしなければ。それで十分な理由になるのならば、私は、喜んでそうさせていただきます」
ワイナンドはドミニクを黙って見つめる。彼は、自分の顔に個人的な反応の感情を出さないよう用心している。ドミニクは、ワイナンドを見上げながら座っている。ワイナンドが自分を探るようにじっと見つめていることに、かすかに驚いている。自分が言った言葉など特に注意を引くような内容ではないかのように。確かに彼はドミニクと寝ることを激しく欲望していた。しかし、そんな行為とは全くそぐわない完全な純潔さだけが、ドミニクの顔の表情にあることを、彼は認めざるをえない。
彼は言った。
「それこそ、私が提案しようと考えていたことです。しかし、こうも露骨に、むきだしに、しかも最初に会った段階で提案するつもりはありませんでした」
「私は、あなたに時間を無駄にしていただきたくありませんでしたし、嘘もついていただきたくありませんでした」
「あなたは、ご主人を大変に愛していらっしゃる?」
「私は夫を軽蔑しております」
「では、ご主人の芸術的天才に多大な信頼を寄せていらっしゃる?」
「私は、夫を三流の建築家だと思っております」
「では、なぜこんなことを、あなたはなさるのですか?」
「面白いからです」
「そんな動機で行動する人間は、ひとりぐらいしかいないと思っていたのになあ。実際のところは、あなたはご主人がストーンリッジ開発を手がけることになろうが、どうしようが、どちらでいいわけですな?」
「はい」
「で、あなたには私と寝たい欲望もないと?」
「全く、ありません」
「そんなふうに気取ることができる女性を賛美することには、私はやぶさかではないですが、しかし、あなたの場合は気取りではありませんね」
「気取ってなどおりません」
ワイナンドという人物は、微笑むときでも、彼の顔の筋肉に明瞭な動きが必要とされることはない。なぜならば、嘲るようなその表情は、いつも彼の顔に浮かんでいたし、その侮蔑的表情は、一瞬のあいだ、より鋭い焦点に結ばれるのだが、すぐにも不可解な表情の下に隠されてしまうのだから。しかし、今、その焦点は、いつもよりもっと鋭いものとなっている。彼は言う。
「そうですか。結局のところ、あなた御自身を私にくれてやりたいということですね。いや、あなたが個人的に私に欲望をお持ちだなどと、私はそんな途方もない錯誤に陥ってはおりません。あなたは、私をトゥーイーについで最低の人間だと考えている。この世界で御自分が関わりたい人間として、最後から二番目の人間として考えている。あなたは、ストーンリッジ開発などどうでもいい。あなたは、あなたが見つけられる最低の人間に、最低の動機ゆえに、自分をくれてやりたいだけですね」
「あなたが、それを理解して下さるとは予想しておりませんでした」
「つまり、あなたは私に対する完全な軽蔑を、性行為を通して表現したいわけですな」
「ワイナンドさん、違います。私自身への軽蔑を、です」
ワイナンドの唇の薄い線がわずかに動く。彼の唇が、ドミニクの個人的心情の表出を初めて垣間(かいま)見たかのように。それは、ドミニクが思わずあらわにしてしまったものだ。だから、それは弱点でもある。ワイナンドの唇は、彼が話をするとき、ドミニクの弱さをしっかり捕捉(ほそく)したかのように動く。
「ほとんどの人間は、自分の自尊心を自らに納得させるのに、随分と長い時間がかかるものです」
「はい」
「自尊心を求めること自体が、自尊心が欠落していることの証明です。言うまでもないことですが」
「はい」
「ということは、自己軽蔑を求めるということがどういう意味であるのか、おわかりですね?」
「私には、自己軽蔑が欠落していると?」
「あなたには、御自分を軽蔑することなどできないでしょう」
「それもあなたが理解して下さるとは、予期しておりませんでしたわ」
「ほかのことはもう申し上げません・・・さもないと、私はこの世界であなたが関わりたい人間として最後から二番目の人間でいられなくなりますからな。あなたの目的にはふさわしくなくなる。私は、最低の人間でいなくてはいけませんね」
ワイナンドは立ち上がる。
「あなたの申し出を受け取ったことを、正式な形で申し上げましょうか?」
ドミニクは賛同の意をこめて、頭を傾ける。ワイナンドは言う。
「実際のところ、ストーンリッジ開発の件で誰に担当させようが、私にとってはどうでもいいことなのです。私が建てたどのビルにせよ、優秀な建築家など雇ったことがありません。私は大衆が望むものを提供するだけです。今回は、建築家の選択にとまどったのですが、それは私のところで働いている不器用な連中にうんざりしたからです。何らかの基準や理性なしに物事を決めるのは難しいものです。こんなことを申し上げても、いっこうにあなたはお気になさらないと思いますが、私はあなたに非常に感謝していますよ。私が見つけうる限り最高の動機を与えてくださいましたからねえ。これで建築家も決まりだ」
「あなたが、ピーター・キーティングの仕事にはいつも感心しているなどとおっしゃらなかったので、私は嬉しくぞんじます」
「ゲイル・ワイナンドの愛人という名誉あるリストに加えられることになって実に嬉しいと、あなたはおっしゃいませんな」
「お望みならば、私がその立場を喜んでいるとお考えくださって構いません。ともあれ私たちは、大変うまくやっていけると思います」
「全くそうですね。少なくとも、あなたは私に新しい経験というものを味あわせて下さった。私がいつもしてきたことをすること・・・ただし、正直に。さて、あなたに私から命令させていただこう。これは命令以外の何ものでもないのですから、私は別のことをしているふりはしません」
「お望みのままに」
「あなたは二ヶ月間のヨット航海に出かけます。私といっしょに。10日もしたら出発します。ニューヨークに戻ってきたら、あなたはもう自由です。ご主人のところにお帰りになればいい・・・ストーンリッジの契約書つきでね」
「大変、ありがたいです」
「あなたのご主人にお会いしたいですな。月曜日の晩に夕食をごいっしょいたしましょう」
「はい、お望みならば」
ドミニクが退室しようと席を立ったとき、ワイナンドが訊ねる。
「実物のあなたと、あなたの彫像の違いを申し上げましょうか?」
「それには及びません」
「しかし、私は申し上げたいのです。同じ要素が正反対の主題を持ったふたつの構成物に使用されているのを見るのは、実に素晴らしいことでしてね。あの彫像の中のあなたは、生の高揚という主題として表現されていた。しかし、実物のあなたが表現しているのは苦しみという主題だ」
「苦しみ?それを私が見せてしまっていたとは自覚しておりませんでした」
「あなたは見せてなどいません。それこそ私が言いたいことなのです。幸福な人間は、痛みに関してあなたほど無感覚ではいられないものです」
(第3部11 超訳おわり)
コメントを残す