第1部(39) サンボーン邸の設計建築に消耗するローク

ロークがサンボーン邸の設計と建築にあたって、さんざんな目にあう前に、ジョン・ファーゴからの嬉しい依頼があった。

ジョン・ファーゴは、行商の荷車を引くことから人生を始めた。50歳になって、ようよう、それなりの財産も得た。今は、マンハッタンの南に位置する6番街沿いに、なかなか繁盛しているデパートを所有している。

長年のあいだ、ファーゴ・デパートメントストアは、向かいにあるもっと大きなデパートと競争してきたが成功を収めてきた。競争相手のデパートは、老舗(しにせ)の有名デパートの支店だ。去年の秋、その老舗のデパートの経営者一族が、新しい繁華街のある、もっと北のほうにその支店を移した。マンハッタンの小売業界の中心は、北へと変わりつつあると、その一族は考えたのだ。

で、店舗を空っぽのままに置き去ることで近隣地区の零落に拍車をかけることに決めた。ついでに、向かいに立つ長年の競争相手のファーゴ・デパートに困惑を残した。かつてここに老舗のデパートがあったということをいつも思い出すことになるような陰鬱な残骸を残しておいたのだから。

その事態に答えて、ジョン・ファーゴは、新しい自社ビルを同じ場所に、自分のデパートの隣に建てると発表した。ニューヨークがかつて見たこともないような新しい、もっと切れのいい洗練されたデパートを建てると発表した。ジョン・ファーゴは宣言した。この古くから開けた地区の威信を自分は保持してみせると。

ジョン・ファーゴはロークを自分の仕事場に呼んだ。そのとき、ファーゴは決定はしていないが会いたいとか、後でいろいろ考え直すかもしれないので約束はできないとか、とか、そういう類のことは一切口に出さなかった。

ジョン・ファーゴは、机に脚を乗せて座っている。パイプをくゆらせながら、言葉を発しつつ煙の輪もいっしょに吐き出している。ファーゴは言う。

「君は建築家だ。どれぐらいのスペースが必要か、予算がどれだけか伝えるよ。もっと必要ならば言ってくれたまえ。後のことは、君に任せる。建物のことは僕にはわからん。しかし、誰が建築について一番わかっているのかは、その人物に会えばわかる。わかるんだ、僕には。だから、どんどん進めてくれたまえ」

ファーゴが建築家をロークにすると決めたのは、ジミー・ゴウエンのガソリン・スタンドのそばを通ったからだ。ファーゴは車を止めて、ジミー・ゴウエンの事務所の中に入った。質問をいくつかした。

その後、彼はオースティン・ヘラー邸の料理人に金をつかませた。ヘラーの留守中に、こっそり邸内をくまなく見せてもらった。それ以上、とやかく言うことはファーゴには、もう必要ではなかった。

5月の下旬の頃、仕事場の製図台がファーゴ・デパートの予想図などで深く埋められてしまっている頃、ロークは、もうひとつの設計料を手にすることになった。

その顧客であるホイットフォード・サンボーン氏は、随分前にヘンリー・キャメロンに設計されたオフィス・ビルの所有者だった。

新しいカントリー・ハウスが必要だと決めたときに、サンボーン氏は、他の建築家を薦める妻の意見を退けた。

彼は、キャメロンに手紙を書いた。すると、キャメロンから10枚にわたる返事が来た。最初の3行は、自分は引退したと告げていた。手紙の残りは全部ハワード・ロークに関する内容だった。

ロークは、そのキャメロンの手紙に何が書いてあったか知らされなかった。サンボーンが、その手紙をロークに見せることはなかった。キャメロンも何を書いたのか、いっさい言わなかった。ともかく、サンボーンは夫人の激しい反対にも関わらず、カントリー・ハウスの設計をロークに任せる契約に署名した。

サンボーン夫人は、多くの慈善団体の会長である。このことは、他のどの職業に就いても、そうまではならないだろうと思えるような貴族性というものへの耽溺(たんでき)を、夫人に植えつけてしまった。サンボーン夫人は、ハドソン河沿いにある新しい地所にフランス風シャトーを建てたい。新しいカントリー・ハウスは、威風堂々と古式豊かに見えて欲しい。まるで由緒ある一族のものであるかのように。もちろん、それを見ることになる人々は、その邸宅がそんなご立派な一族のものではないと知っていることは、夫人は承知している。しかし、夫人にとっては、そうであるかのように見えればいいのである。それでいいのだ。

夫のサンボーン氏の方は、ロークがどんな種類の邸宅を計画しているか詳細に説明したあとに、契約書に署名した。いとも簡単にロークの案に賛成した。完成予想図ができあがるのさえ待つこともなかった。

なぜ勝手に契約してしまったのかと夫人に攻めたてられると、サンボーン氏は気弱に答えた。

「だって当然じゃないか、ファニー。僕はモダンな家がいいんだ。もう前にそう言っただろ。キャメロンが建てるだろうような家さ」

「キャメロンなんて、今更どんな意味がありますの?」

夫人は問い詰めた。

「キャメロンが僕に建てたオフィス・ビルみたいなものは、ニューヨーク中を探しても見つからないほどいい。僕にわかっているのは、それだけだ」

磨きたてられたマホガニーの光があふれる、サンボーン家の雑然としたビクトリア朝の客間で、夫妻とロークの話し合いは、幾晩も幾晩も続いた。

サンボーン氏は、意見が定まらない。すぐにふらつく。ロークは、腕を大きく回して、夫妻の客間を見渡しながら言う。

「これが、あなた望むものなのですか?」

すると、サンボーン夫人が反発する。

「まあ、なんていう出すぎた物言いでしょう!」

しかし、サンボーン氏の怒りが爆発する。

「いい加減にしなさい、ファニー!ロークさんが正しい!もうこんな部屋は、僕には無用だ!こんなゴチャゴチャしているのは、うんざりだ!」

ロークは、完成予想図が出来上がるまで誰にも会わなかった。それほど集中した。

ロークが考案した邸宅は、飾り気のない自然石でできている。大きな窓と多くのテラスがついている。ハドソン河添いの庭園の中に立っているのだが、河の流れのように広々としているし、庭園のように開かれている。

階段がいくつかあって、その階段が庭園の広がりと結びついている。しかし、その階段に気がつくには、よほど注意して庭園を描く線をたどらねばならない。テラスの隆起が実になだらかだからだ。建物の基底部が壁とつながる様子も実になだらかである。だから、壁というものの実在感も非常に自然である。

したがって、敷地にある庭園の木立の木々が、邸宅の中に流れ込み、そのまま邸宅の中を通っているように見える。庭園の木立の中に立つ邸宅は、陽の光をさえぎるバリアではなく、光を集める器のように見える。光を集中させ、戸外の明るさよりも、もっと明るい光を発しているように見える。

サンボーン氏の方が、その完成予想図を夫人より先に見た。彼はその図をじっくり見て、吟味し、それからこう言った。

「私は・・・私は、どう言えばいいのかわかりませんよ、ロークさん。すごいですな。キャメロンがあなたに関して言ったことは的確でしたな」

しかし、他の人間がその予想図を見たあとになると、サンボーン氏はもうこの確信が持てなくなっていた。サンボーン夫人は、そんな邸宅はおぞましいと評した。夜の長い議論が、また始まった。

「まあ、なぜ、なぜそこに小塔を加えることができませんの?その平らな屋根には、いくらでもスペースがありますでしょう?ロークさん、縦の仕切りのある窓では、なぜいけませんの?なんの違いがありますの。窓は十分に広いではありませんか。ですけれども、私では全部目におさめることができないくらいに大きな窓がなぜ必要なのかしら。プライバシーが全く保てませんわ、これでは。にもかかわらず、私は、あなたの案を喜んで受け入れるつもりですのよ、ロークさん。あなたが、こうも頑固におっしゃるのですからねえ。なのに、なぜ窓に縦の仕切りは駄目だとおっしゃるのかしら?そうすれば、むき出しの感じが和らぎますわ。貴族的な雰囲気も出ますし、中世のお城のような雰囲気も出ますでしょう?」

サンボーン夫人にその完成予想図を急いで送られて、それを目にすることになった夫人の友人や親類には、この邸宅の評判は悪かった。ウオーリング夫人は、途方もないと評した。フーパー夫人は粗野だと言った。メランダー氏は、これは夫が妻に贈るものではないと言った。アップルビー夫人はまるで靴工場みたいですわねと、述べた。デイヴィット嬢は、何枚かの予想図をちらりと見て、褒めながらこう言った。

「あら、なんて芸術的なのかしら!どなたの設計かしら?・・・ローク?・・・ローク?・・・聞いたことがございませんわ・・・そうねえ、率直に申し上げて、ファニー、これはインチキくさくありませんこと?」

サンボーン夫妻はふたりの子どもたちに意見を聞いてみた。ふたりの評価は真っ二つに分かれた。

19歳になる娘のジューン・サンボーンは、建築家という職業の人間はおしなべてロマンティクなものだ勝手に思い込んでいたので、両親が若い建築家に設計を依頼したと耳にしたときは喜んだ。しかし、彼女はロークの外見が嫌いだ。彼女が意見をさしはさんだとき、ロークが関心を示さなかったことについても、気にいらなかった。だから彼女は、こんな家は気分が悪くなると言った。自分はこんなものに住むのは真っ平ごめんだと言った。

24歳になるリチャード・サンボーンは、大学では成績も優秀だったが、酒に溺れ、いまや緩慢(かんまん)に死に向かいつつある状況だった。なのに、この息子は、ロークの設計図を見ると、いつもの無気力な状態から突如として活気づいた。この家は素晴らしいと宣言して、家族を驚かせた。この言葉が、彼なりの美的な評価から来たのか、母親への単なる嫌悪から来たものなのか、それともその両方なのか、誰にもわからなかったのではあるが。

ホイットフォード・サンボーンは、どこからか新しい意見が出てくると、いちいち態度がぐらついた。で、このようにぶつぶつ言うのだった。

「その、まあ、縦仕切り窓は論外なんだが、まあそんなものはろくでもないからねえ。しかし、ロークさん、妻の意を汲んでコーニスを窓に付けるぐらいは、どうかね?家族の平和の維持のためですよ。単にコーニスですよ。それなら、別に何も台無しにしないでしょうが。どうですかな、それならば?」

ロークは、はっきりと言い渡した。

「僕は、この設計図のまま建てることができないのならば、いっさい手を引かせていただきます」

それで、やっと、この長い長い話し合いは終わった。サンボーン氏が、ロークに同意して契約書に署名したからである。

サンボーン夫人は、そのあとまもなく、評判の良い業者が、この邸宅の建設を請け負わないということを知り、喜んだ。

「ほらごらんあそばせ」と、夫人は、勝ち誇ったように言う。サンボーン氏のほうは、そんなものごらんあそばす気はない。

サンボーン氏は、やっと見つけ出してきた。納得はいきませんが、しかたないので特別に請け負うのですからねと念を押してきた、あまりパッとしない建築業者を、やっと見つけ出してきた。

サンボーン夫人の方は、この建築業者に、反ロークの同志を見つけた。だから、この業者を茶に招待するような、社交の慣例では前例のないことを敢行した。随分前から、夫人にはこの邸宅に関する一貫した考えなどは、もう無くなっていた。ただ、ロークだけが憎かった。彼女の夫が雇った建築業者は、建築家という建築家は全て、原則として憎んでいた。

サンボーン邸の建設は、夏と秋のあいだ、ずっと進められていた。しかし、毎日、何らかの戦いが生じていた。

「でも、ロークさん、私は申し上げましたわ。寝室にはクローゼットが三つ欲しいって。はっきり覚えておりますわ、私。金曜日でしたわ。私ちゃんと客間におりましたわ、そのとき。主人は窓のそばの大きな椅子に腰掛けておりまして、私は・・・設計図がなんですって?どの設計図ですって?私に設計図など理解できるはずがないでしょう!?」

「伯母のロザリーが申しますには、円を描いた階段は上がれそうもないそうですのよ、ロークさん。どういたしましょう?家に適した客を選べとでも?」

「ハルバート様がおっしゃいますには、あんな類の天井は長くはもたないとかで・・・あら、ええ、ハルバート様は、建築家については、いろいろご存知ですわ。ヴェニスにふた夏もいらしたことがおありになりますのよ」

「娘のジューンが、かわいそうに、あの子の部屋が刑務所の独房みたいだと言いますのよ・・・ええ、それが娘の感じ方ですの。たとえ、暗くはなくても、あの部屋は娘にそう感じさせるのですわ。娘が現にそう感じる以上、明るかろうが暗かろうが同じことじゃありませんか、どちらにしたって」

ロークは、幾晩も徹夜して、避けがたい変更を強いられるために、設計図の書き直しをした。それは、すでに建ち上げられた床や、階段や、仕切りを壊すことを意味していた。それは、建築費用がどんどんかさむということでもあった。建築業者は肩をすくめて、こう言った。

「そら見たことですか。こういうことは、いつも起きることでしてね。頭の中だけで奇妙なものを気まぐれに考えつく建築家なんぞに設計させると、こうなるんでさ。さてさて、完成する前に、どれくらい金が余分にかかることか、見ものですな」と。

邸宅の形ができてくると、変更を加えたくなったのに気がついたのは、今度はロークの方だった。サンボーン邸は東と西に翼が広がる形で建設されているのだが、その東の翼のでき具合にロークは満足できなかった。

現実に建設されて初めて、ロークは自分の間違いに気がついたのだ。それを直す方法にも気がついた。直したほうが、サンボーン邸は、より論理的な全体を構成することになると、わかった。ロークは、建築においては、最初の数歩を歩みだしたばかりだ。この直しや訂正は、ロークにとっては最初の実験となる。彼は、そのことを誰にでも認めて平気であった。自分の未熟さや間違いを隠す気はなかった。

しかし、サンボーン氏は、その変更を許可しなかった。今度は、ロークの番だった。ロークは懇願した。いったん、変更される新しい東側のイメージが、ロークの頭の中で鮮明になると、現に建てられている状態の邸は見るのさえ我慢ができなかった。

「私が、あなたに同意できないのは、そういう点ではないのですよ」と、サンボーン氏は冷たく言う。

「ロークさん、実際、あなたの言うことは正しいと私は思う。しかし、改築費用の余裕がないのですよ、もう。残念ですが」

「奥様が僕に強いた馬鹿げた変更ほどには、費用はかかりません」

「その件は、もう蒸し返さないでいただきたい」

「サンボーンさん、もし、全く費用がかからないのならば、この変更を許可する書類に署名していただけますか?」

「いいでしょう。ただし、そんなことができる奇跡を、あなたが呼び寄せることができるならばですが」

サンボーン氏は署名した。邸宅の東側は改築された。ロークが自分で、その費用を払ったから。その金額は、ロークがこの邸宅の設計料として受け取った額よりも多かった。

サンボーン氏は、さすがにそれにはためらいがあった。あらためて自分が支払いたいと思った。しかし、それを止めたのは夫人だった。夫人はこう言ったのだ。

「ただのハッタリですわよ。ああいう形で、あなたに心理的圧迫をかけたいだけですわ。あの人は、ああやってあなたにいい感情を持ってもらおうとして、ゆすっているわけなのよ。ちゃんと、あなたが支払うことは、あの人の計算に入っていますわよ。見ててごらんなさいな。いずれ、あの人のほうから頼んできますから」

ロークは、その件について何も頼まなかった。サンボーン氏も払わなかった。

邸宅が完成したとき、サンボーン夫人はそこに住むことを拒否した。サンボーン氏の方は、その邸宅を感慨深い顔つきで見つめた。彼はその邸宅が好きだ。こんな家が欲しいといつも思ってきた。しかし、それを認めるには、サンボーン氏は疲れすぎていた。妻や娘の執拗な攻撃や建築業者の悪意のある愚痴などに降参してしまったのだ。

その邸宅は、完成しても、家具が入れられることはなかった。夫人は、夫と娘を連れて、冬の間はフロリダに行ってしまった。

夫人は言った。

「そこでしたらば、上品なスペイン風の家がありますの。ありがたいことですわ。単に建売の物件を買っただけでしたのに。自分の家を自分の好きに建てようとしますと、こういうことが起きますわよ。半人前の馬鹿な建築家になど頼むと、こうなりますわ!」

みなが驚いたことには、息子の方は、野蛮なる意志の力を突然に爆発させて、フロリダに行くのを断固として拒絶した。この息子は、この邸宅が気に入っていた。他のどこにも住みたくはなかった。数々の部屋のうち3部屋だけが、息子のために家具を備えられることになった。他の家族はフロリダに去った。しかし息子はハドソン河沿いのこの邸宅にひとりで移り住んだ。

夜になると、ハドソン河を行く船から方形をした黄色いものがひとつ見える。それはサンボーン邸の灯(ともしび)だ。とてつもなく広い、死んだように静かなサンボーン邸の沢山の窓の中に、小さく埋もれたような窓がある。そこに灯(あか)りがともっている。

アメリカ建築家協会の会報に、小さな記事が載った。

「高名なる企業家、ホイットフォード・サンボーン氏によって最近、建設された住居に関して、奇妙なる出来事が我々の元に報告された。このサンボーン邸は、ハワード・ロークなる人物によって設計された。建設費用は10万ドルをゆうに超えるものと思われる。しかしながら、この新居は、サンボーン家の人々によって、居住不可能と判断された。今や、この邸宅は打ち捨てられたまま、建築家という専門職の無能の証人として虚しく立っている」という悪意に満ちた記事が。

(第1部39 超訳おわり)

(超訳おわり)

このセクションのサンボーン邸にまつわるようなことは、建築家の仕事でありえるのかどうか私は知らないが、起きそうな事例であるような気がする。

こういう奥さんも娘もいそうな気がする。

こういう脳足りん奥さんを描かせると、アイン・ランドは非常に上手い。

脳足りんぶりが、非常に生き生きと眼に浮かぶ。

「君が金を出すわけではないのだから、余計なクチ出し無用!」とハッキリ言えずにぐらつく夫というのも多そうだ。

この小説は1920年代から30年代を舞台にしているので、ドルは当時のドルだ。

私が調べた範囲で行くと、1944年で金1グラムは4円61銭。今は4800円ぐらい。

ということは、1000倍以上に値上がり。

金本位制で計算すると、当時の5ドルは今の5000ドル以上になるはずだけど、為替とかいろいろあるんで、こんな単純な計算では、この小説の舞台における1ドルが、今の日本のいくらになるか、見当がつかない。

週給50ドルでスナイトの設計建築事務所に設計者として雇われた26歳のロークは、一応専門職だから、今の日本で考えると月給税込30万円とすると、当時の週給50ドルは、現在の日本円換算7万円ぐらいなのだろうか。

そこまではいかないか。

小説に出てくるドルやフランやポンドや円が、現在の換算でいくらするか、いつも気になる。

ところで、サンボーン邸はニューヨークのハドソン川沿いに立つ。マンハッタンから北のハドソン川沿いは、富裕層のカントリーハウスが立つ地域である。富裕層のお嬢さんたちが、大学を出てから入学するFinishing School(富裕層の奥様としてのマナーとか色々学ぶ花嫁学校)も立つ場所だ。

ハドソン川沿いに立つ豪勢なお屋敷を遠望するクルージングも、船から降りてニューヨーク北部のタリータウンにあるロックフェラー邸などを見物するバスツアーも、アメリカ人には人気がある。

こーいう事実から見ても、ハドソン川沿いの地所に立つサンボーン邸がいかに贅沢なものか、わかる。

そのサンボーン邸の設計料以上の額の金を出して、ロークはサンボーン邸の修正をしている。

納得のいく仕事をするために、ロークは自腹を切った。

設計料commissionというのは、直接人件費特別経費 技術料諸経費である。

現在の日本で、鉄筋コンクリート5階建てのマンションの設計料で、3,531万円という事例をネットで見つけた。

ロークには、よく仕事がない時期があるが、彼は質素に暮らすので、設計料はだいたい貯金する。だから意に染まないことはしなくても食っていられる。という設定になっている。

大邸宅の設計料なら、現在の日本円換算だと、最低2000万円ぐらいが設計料だろう。

ならば、ロークひとりのワンオペ事務所ならば、8年間ぐらいは無職でも食っていけそうだ。

その金を、おそらく2000万円ぐらいの金を、サンボーン邸修正のためにロークは出した。

サンボーン邸の仕事は、ロークの心身と財布ともに消耗させたわけだ。

The Fountainheadには、アイン・ランドが生活の苦労をしていた頃に書いたものなので、金のことに関してのリアリティがある。

「痛み」と言うべきか。

アイン・ランドも、この小説を書く時間を確保するために出版社から前金をもらい、それを生活費にあてた。

そのほかに、映画化できそうな小説を読んで、その要約を書いて映画会社に送るというアルバイトもしていた。

The Fountainheadを書き上げて出版して、映画化権料が入って、アイン・ランドはやっと貧乏から解放された。

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